相談員ブログ

線状降水帯を体感した

8月の終わりに日本列島を襲った台風10号ですが、淡路島にも被害をもたらしました。
被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。(詳細は神戸新聞NEXT

今回の台風では、淡路島生活における災害の備えについて色々と考えさせられました。と言うのも、私は住んでいる町の自治会役員を仰せつかっており、8月29日に淡路島南部で発生した線状降水帯による豪雨の真っ只中に、住民への避難案内などの打ち合わせをおこなうために緊急で招集され、その際に聞いた地元の方々の災害に対する心の準備に感心させられたからです。淡路島は普段はドライブがてら行ける観光地として人気がありますが、いざ災害が発生して2本の橋が封鎖されると、たちまち物流が止まり孤立してしまいます。そんな中で長年暮してきた人たちの備えについてご披露していきます。

台風10号による雨

こちらは淡路島で線状降水帯が発生したとされる2024年8月29日の1時間ごとの降水量です。洲本観測所の計測によると、20時以降に雨量が増え、1時間で20㎜ほど降っていたことが分かります。1時間に20㎜だと結構強く降っていて、部屋の中にいてもザーザーという音が聞こえるレベルです。

これが我が家の近所(南淡観測所)だと、、、

1時間に80㎜を超える雨が降り、ニュースなどでは115㎜などとも報道されました(◎_◎;)

よく、激しい雨のことを「バケツをひっくり返したような」なんて表現をしますが、それでも生ぬるい!!
招集がかかったので、こんな雨の中を集会所に向かいましたが、道には足首より上まで雨水があふれていて、それが低い土地にそれなりの勢いで流れいきます。足を取られるほどの激流ではありませんでしたが、こんな時の外出は二度とごめんです。

情報収集は細目に丹念に!

そんなこんなで全員ずぶ濡れになりながら集会所に集まり早速対策の打ち合わせに。今回最も驚いたのは、地元の方々の情報収集の速さでした。集まった各々がすぐにスマホアプリなどを使って状況把握を始めました。線状降水帯があと何時間続くのかを確認する人、土砂災害や河川の氾濫状況を調べる人、すでに被害が出ていた徳島などの情報を整理する人、、、普段は世間の情報にやや疎いと思っていた人たちが、あらゆる手段を駆使して情報収集をしていました。

そこで感心したのが、気象庁のホームページで公開されている『キキクル』。

土砂災害の危険性がある地域や河川の氾濫の危険性を地図にして出してくれています。上の写真は線状降水帯が発生した時点のものとは異なりますが、危険度を色分けして確認することができました。あの時は近くの本庄川が赤色の警戒レベルになっていて、避難指示の判断に役立ちました。(実際には避難指示は出しませんでした)

とにかく、焦らない!

打ち合わせの最中、突然電気が消えました。停電です(;一_一)
確かに数十分前から時折、稲光と雷鳴がはげしくなり、窓の外からフラッシュでも焚かれたような眩しさは感じていましたが、どうやら近所に落ちたみたいです。窓から外を確認すると街灯も近所の家もみんな真っ暗。集会所だけブレーカーが落ちたのではなく、ここら一帯が停電した模様です。
内心、真っ暗闇になったことに不安を覚えた私をよそに、地元の人たちは淡々とスマホのライトを点灯し、今度は関西電力のホームページを検索して停電の復旧時間を調べはじめました。

「すげぇ~、落ち着いてる! ってか、停電に慣れてる!」

という感心は心の中だけにして私も平静を装いながら会話に加わりましたが、都会暮らしが当たり前だった私は、スマホのライトだけでは何とも心細く、早い復旧を祈るばかりでした。

ちなみに、3時間続いた停電は夜中には復旧したようですが、暗闇の中でやれることが何もなかったので早々に布団に入った私は、クーラーの効いていない蒸し風呂のような寝室で寝苦しい夜を過ごしました(-_-;)

役割分担はシンプルで明確に!

私の住む町は中心部に幅2m以上もある用水路が流れています。今回の台風では、この用水路が溢れる可能性があり、溢れた場合は近隣の住宅が浸水することは間違いありませんでした。そのため、情報収集と同時並行で用水路の水門を開放する必要がありますが、ここでの指示系統がとてもシンプルで感心しました。

自治会メンバーから水門の担当者(こんな担当があったとは…)に電話を入れると、すでに水門に居るとのこと。今後の雨量は相当なものになるので、とりあえず全開にするよう指示してから電話を切り、すぐさま他の水門で待っている担当者に電話。

主には農業関係者が水門の役を受けているようなんですが、各々が「危ないかも」と感じたら、すぐさま次の行動に移れるように動いています。防災意識が高いと云うよりも、長年受け継がれてきた慣習に近いのかもしれません。防災行動が習慣化されているというのは、なんとも頼もしいことです。

備えあれば、憂いなし!

8月8日に宮崎県で発生した地震により、南海トラフ地震臨時情報が発表されたこともあり、自治会でも防災について色々と話し合いをしていました。その中で食料や水の備蓄を「どこに」「どれくらい」備えておくのかなどについても議論しましたが、費用との兼ね合いもあり、長期的な計画を立てて取組むことになりました。

今年はその第一歩、備蓄倉庫の購入と設置です。

津波が起こった時に逃げ込むことになっている高台に物置小屋を設置し、将来的にはそこに全住民の3日分の水と食料、毛布などを備蓄する予定です。今回のような台風で避難することになっても、しばらくは持ちこたえられるようにはなる予定です。

 

寺田寅彦は、『天災は忘れた頃にやって来る』と言いましたが、同じく

『災害は注意次第でどんなにでも軽減できる』『用心しておけばその効果の現れる日がいつかは来る』とも言っています。

島での暮らしは都会の防災体制とは少し違います。その辺りも意識して移住生活を楽しみたいですね。

この記事を書いた人

田畑尊靖

田畑尊靖

転勤で福井や東京などで暮した結果、静かな田舎暮らしに憧れて東京脱出を計画。どこでも仕事ができるように中小企業診断士や行政書士の資格を取ってから2021年9月に南あわじ市に移住。今はコンサルタントとして起業し、地域の人たちの「法律と経営の街医者」的な存在として様々な相談を受けている。(https://tbt-asml.com/)

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