こんにちは。東京から淡路島に移住して4年目になる小林です。
以前、「淡路島に移住して挑戦!民泊開業の大変なところ」という記事で、わたしが移住後に挑戦した古民家をリノベーションしての「民泊事業」について触れました。
前回は主に、建物をリノベーションしていくまでの大変さについてご紹介しましたね。
その後、わたしも民泊開業に向けて、行政手続きが進み、いよいよ本格的に運営できる見込みが立ってきました。
そこで今回は「移住して挑戦!民泊開業の大変なところパート2」をお送りしたいと思います。
主に、リノベーション後の行政手続き、お客様を迎え入れるまでに整えておくべき営業体制づくりなどの体験談をまとめてみました。
旅館業の「簡易宿所」か、住宅宿泊事業法の「民泊」か

建物が完成したら、いよいよ開業!……と、すぐには運営を始めることはできません。
宿泊事業を行うにあたり、まず営業に必要な「許可」または「届出」の行政手続きが必要です。
これには大きく分けて2つの方法があり、それぞれ要件が異なります。
※細かく分けるといろいろありますが、分かりやすく今回は2つに絞っています。
| 旅館業法(簡易宿所) | 住宅宿泊事業法(民泊) | |
| 所管省庁 | 厚生労働省 | 国土交通省 厚生労働省 観光庁 |
| 許認可等 | 許可 | 届出 |
| 営業日数の制限 | 制限なし | 年間提供日数180日以内 (条例で実施期間の制限が可能 |
| 消防用設備等の設置 | あり | あり 家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要 |
| 近隣住民との トラブル防止措置 |
規定なし | 規定あり |
旅館業法(簡易宿所)は、営業日数に制限がなく、365日営業できるのが最大のメリットです。その一方で、民泊に比べると設備の要件などのハードルは高めです。
一方、 住宅宿泊事業法(民泊新法)は、旅館業法の簡易宿所に比べて比較的要件が緩く、始めやすいのが特徴です。ただし、営業日数が年間180日までと定められています。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/index.html
行政手続きを進めてみて感じたこと
わたしの場合は、まず淡路県民局の担当窓口に図面や写真を持参し、 対面で相談することから始めました。
何度も通う中で、開業する宿の形態(わたしの場合は「家主同居型の民泊」)によって、必要な書類や設備(カメラ設置が不要になるなど)が変わることを丁寧に診断してもらいました。
正直なところ、公に出されている要件の内容はインターネット上の情報だけではなかなか読み解くのが難しかったです。
個別具体的な要件を、物件の状況などに合わせて確認する方法が分かりにくく(解釈が難しく)、まずは管轄の窓口に足を運び、対面で「自分の場合は何が必要か」を診断してもらうのが一番の近道に感じました。

民泊の場合は「地域住民の合意」が重要

書類準備の中でも、担当窓口の方から「一番力を入れて説明を受けた」のが、近隣住民への説明と合意形成でした。
特に都市部ではトラブルになりやすい部分とのことで、 入念に対応をしてほしいとのことでした。
幸い、この点は非常にスムーズに進みました。
というのも、わたしは「地域おこし協力隊」としてこの過疎集落に移住した経緯があり、地域の方々も民泊の取り組みを応援してくれていた背景があったからです。

古民家を利活用するゴール像として、民泊としての運営も当初から見込んでいたので、説明会を開く前から町内会のみなさんの合意が取れているような状況でした。
(ありがたい限りです)
これから移住して何か挑戦したい方は「移住してどんなことがしたいのか」「どういう見通しで活動したいのか」を周りに話しておくことで、地域の方とのコミュニケーションや信頼関係が作りやすいと思います。
ぜひ、積極的に自己開示されてみてください。
素性が分からない、どこを向いている人なのか分からない、そんな立ち振る舞いだと地域の人は不安になると思いますので、積極的に発信していくとよいですね。
許可が取れても終わらない!「運営体制(オペレーション)」の構築

無事に行政手続きの許可や届出が受理されたら、次に「お客様を受け入れる体制(オペレーション)」を構築するフェーズが待っていました。
これが想像以上に大変。(まさに今やっています!)
小規模とはいえ、お客様を迎え入れるにあたって、以下の仕組みがなければ宿泊事業は運営できません。
- 予約管理:どの媒体(OTAなど)で、どうやって予約を受け付けるか。
現在は、予約管理システム導入と設定をしています。 - 顧客対応:予約から滞在までのやり取り、宿泊案内の作成、設備の使用ルールの策定など。
民泊はフロント(玄関帳場)がないため、滞在中の不明点などは公式LINEで密に連絡が取れるように準備中です。 - 決済管理:個人的には現金管理は避けたく、お客さんの利便性も確保したいので、オンライン決済ツールを導入し、仕組みを整えています。農業体験など、当日のオプションの対面決済も検討中です。(「Square」というツールを導入しました)
- 清掃・リネン管理:シーツやカバーなどの管理です。外注するのか、ベッド数が少ないので自分で運用するのか。
ここはわたしもまだ模索中です。
上記のように、けっこうやるがたくさんあります。
1つ1つ検討していますが、選択疲れを起こしている今日この頃です……笑
集客が一番重要!発信の仕組みを整える

運営体制と並行して進めなければならないのが「集客」です。
どんなに素晴らしい建物とオペレーションを準備しても、お客様の目に触れ、予約されなければ、1円の売上にもなりません。
せっかくここまで労力と時間をかけたので、やはりひとつの事業として成り立たせ、持続可能な事業にするためにも集客はとても重要です。
とはいえ、集客って一番大変ですよね。
宿の集客の方法には大きく分けて2つの方法があります。
予約サイト(OTA)経由の集客
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- じゃらんや楽天トラベルといったプラットフォームを使えば、多くの利用者にアクセスできる反面、売上に応じた「販売手数料」が発生します。
- また、複数のサイトに掲載すると予約の重複(ダブルブッキング)を防ぐ管理が必須となり、多くの事業者が「サイトコントローラー」という専門のシステムを導入します 。これ自体がコストであり、使いこなすための学習も必要です 。
自社での直接集客
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- 手数料を回避し、宿のファンを増やすために、自社の公式ウェブサイトやSNS(特に宿の雰囲気と相性が良いInstagramなど)で発信する方法。
- これは「やれば終わる」ものではなく、魅力的な写真や文章で日々発信を続けるという「継続的なコンテンツ制作」が求められます。
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特に管理が大変なのは、複数の予約サイトを導入した場合、予約の重複(ダブルブッキング)を防ぐ仕組み。
そのために「サイトコントローラー」という管理システムが導入されている事業者さんも多いです。
わたし自身もまだ、運営体制を固めきれていない状況ですが、こうした「ツールやシステムの活用」などは、慣れていない人にとってはかなり大変な作業かもしれません。
幸い、わたしは前職がシステムエンジニアで、現在はライター兼デザイナーとしてお仕事もしているため、システムを選定したり、Webサイトの原稿やバナーを作ったりすることは自分でできます。
ツールやシステムを導入して、どのような業務フローで仕組みを作るかを考えるのは割と好きではありますが…..
正直「楽しみながらも、めんどくさいな」というのが本音です。笑
DIYを交えながらの改修だと、建物ができた時点でやや燃え尽きてしまったんですよね…..苦笑
古民家を利活用した宿泊事業は大変だけど・・・

民泊開業は、リノベーションが終わってからが本番です。
行政手続き、地域との合意形成、そして運営・集客タスク。これらをひとつひとつクリアしていく必要があります。
わたしの場合、移住先で築いてきた地域との「人間関係(暮らし)」と、これまで培ってきた「仕事のスキル(ライティングやシステム知識)」の両方が、民泊開業を支える土台となっています。
後からみればキレイに仕事につながっていますが、移住前から今の状態を見据えて描いてきたストーリーでは決してありません。
これまでやってきたことが移住先でどんな仕事に結びつくかは、実際にやってみないと分からないことの方が多いです。
ですから、これから移住を検討されている方も、「(スキルや知見を)今何も持っていないから移住先ではやっていけない」という考え方ではなく、「これからいろいろと身につけていこう!」という、前向きなスタンスで検討を進めていくのがよいかと思います。
わたし自身も移住を検討し始めてから
- 電気工事士の資格を取得し
- バックホーとフォークリフトの免許を取得し
- ライティングスキルを学んで仕事を獲得し
- DIYは見よう見まねでやってきました。
移住前に持っていたものは決して多くはなかったと思います。
今後は、移住を通して身についたことを軸に、この民泊運営と、ライター・デザイン業という「複数の生業」を持つことで、不安定な個人事業主としての基盤を少しでも安定させていきたいと考えています。
これから地方で何か新しい挑戦をしようと考えている方は、ぜひ移住を通してどんな暮らし方がしたいか、そしてどんな働き方がしたいかを見直してみてはいかがでしょうか。
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追伸




