国道28号線からそれること約5分、たどり着いたのは幻とも言えそうな世界。田舎といわれる淡路に住む私にとっても、まったくの異空間がそこにあったのです。
南あわじ市倭文(しとおり)土井、「薫陶の郷」。
そこは淡路島の田舎で暮らしたい・・・そんな夢を持った池上邦彦さん(64才)&みさえさん(62才)夫妻がたどり着いた先でした。
「薫陶の郷」は2006年に地元で自然を生かした地域活性化に取り組むNPO「ふるさと応援隊」(代表 北谷雅良さん)が人の住まなくなった1軒の古民家を手入れし、庭の整備、石窯の設置などを行い、農村と都市の交流拠点としてオープンしました。
2008年に「薫陶の郷」管理人が募集され、2009年1月に管理人として移住してこられたのが池上さん夫妻です。
池上さんがこの土地を初めて訪れたのは、今から約1年前。大阪で開かれた「ふるさと回帰フェア」会場で、あわじFANクラブのスタッフとの出会いから始まります。
「いい場所がありますよ。」といいながらも、この都会のセンスあふれるお二人が果たして淡路のあの“ド田舎“に暮らせるのだろうかという心配ももちながら話し掛けたのだとスタッフがいいます。
「来てすぐは寂しくて泣いてばかりいた」というみさえさんの言葉通り、池上さんたちも不安を抱えながらも、数件見て回った後、他の場所ではなく“縁を感じた”この「薫陶の郷」を選んだのだと振り返ります。
「田舎暮らしがずっと昔からの夢だったんです。」と池上さん。
その夢に向かって、お二人の仕事が始まりました。
まずは荒れ放題だった家中の大掃除。何年も人が住んでいなかった上に、築130年の母屋に離れを加えると部屋数は10数室。柱磨きに始まり、天井、窓・・・家中をピカピカに磨き上げました。
さらに家の周りの庭や池の手入れ、室内外の補修工事までご自分たちの手で、なんと3カ月で仕上げました。
ここに来た人は、自然にふれたり星を見上げたりのんびりとした時間を楽しむといいます。そしてみな心身共に癒され、満足して帰っていくのだと・・。
池上さんお手製のお蕎麦を頂きながら家の中を見回すことしきり。この夢のような癒しの空間を作り上げたお二人、どこにそんなパワーがあったのだろう・・・改めてお二人の田舎暮らしへの想いの強さを感じました。まさに愛の共同作業ですね!
*取材を終えての感想は十分文章にさせていただきましたが、もうひとつ紹介したい池上さんのうれしいお言葉です。
「たまに橋を渡って出かけても、早く淡路へ帰って来たくなります。気候もよいし、街へ出るのも便利、そしてなによりも人が温かい淡路島での暮らしがすっかり気に入っています。」
薫陶の郷
南あわじ市倭文土井1541
取材日:2011年01月31日