淡路島にも冬の到来。山々の赤や黄の葉を眺めながら島の最南端、南あわじ市津井地区へ取材に出かけました。少々迷いながらたどり着いた先で迎えてくれたのは、清岡正明さんとまなみさん。古民家の魅力をフルに活かしたオシャレなこのお宅は清岡さん一家の住まいであると同時に仕事場であり、ギャラリーでもあります。 ひとなつこい笑顔で迎えてくれたご夫妻にお話を聞きました。
共に洋服のデザイナー、パタンナーであるお二人の出会いは東京でした。それぞれ服飾メーカーに勤務していた頃に結婚。その後子育てが始まった頃に横浜に住み始めたお二人に転機が訪れました。出産後いろんなものの好みが変わったというまなみさん。自分が着たいものが見つからない、自分の着たい服を自分でデザインしたいという思いで、2005年秋、お二人のオリジナルブランド、Char*を立ち上げたのです。
仕事と育児を両立しながら、都会での子育てにも違和感を持ち始めました。そんな頃に思い浮かんだのが、いなか暮らしだったのです。
生まれ育った淡路島のいなかが嫌で東京へ出たまなみさん。都会で学び得た仕事も人脈も、今ならば淡路島でも活かすことが出来る、淡路島でこそ自分らしい作品作りが出来ると思ったのではないでしょうか。
2007年の春からは一家で淡路島暮らし。高知出身の正明さんも自然の中で仕事に打ち込んだり、のんびりと子育てが出来る、と淡路暮らしに満足の様子です。
確かに職業柄お二人が生み出すデザインやパターンはパソコンなどの機器を使えば淡路から離れた場所にも送ることが出来る時代です。また逆に、綿や麻の自然素材を使う洋服を考えるのにふさわしいのは、むしろ自然いっぱいのこの土地のようにも思えます。いろいろな情報よりも自分たちのやりたいことが出来るという正明さんの言葉通りです。
すぐ近くに海があり、きれいな夕陽が見える環境の中で育まれるのはお二人の作品ばかりではありません。二人の息子さん達も元気いっぱいに育っています。75年もの昔に遠い親戚の方が建てたという広々としたお家には薪ストーブがあり、ふんわりとした温かさが感じられます。そこに明るく響く子ども達の声がいっそう家庭の温かさを感じさせてくれることでしょう。
でも街からはかなり離れたこの土地、不便さは感じませんか?
大きく頷くまなみさんは、こうも言います。「淡路の人は新しいことや知らないことに尻込みするところがある。」 お二人の工房Charへは淡路島以外からのお客さんやお友達が来るほどの人気ですが、地元の人にももっと訪れて欲しい。みんながもっとオープンになって交流や情報交換をしてこれからの時代を背負う子ども達のためにも伝えていきたいと。
淡路島へ移住して来る人が増えつつある今、地元の住民もその新しい風を受け、活性化につなげていくことが大切である・・お二人のお話から強くそう感じました。
今後マルシェやイベントを通して服を買ってくださるお客さんと「顔の見える関係」を作っていきたいというお二人の瞳は、この日の秋の空と同じくらい爽やかでした。
取材日:2011年12月19日