一年で一番さわやかな季節を迎えた淡路島。ゴールデンウィーク中に島を訪れる人々の多さには喜びと驚きがつきません。
そんな頃、お店が落ち着いた時間を狙って、南あわじ市榎列(えなみ)にある「ソラ」を訪問しました。明るくてホッとさせくれる雰囲気の店内へ出迎えてくれたのは、雑穀エキスパートであり店長の木下博允さん(58歳)と笑顔の素敵な奥様、惠子さんです。
雑穀が入った大ぶりの瓶がズラリと並ぶ棚が見えるおしゃれなカウンターで博允さんに淡路島への移住について聞いてみました。
東京都・新宿区四ツ谷の出身で、お母様が飲食店を経営していたという博允さん。早くから食に興味を持ち、その腕前は小学校の調理実習で先生を驚かせる程だったとか。また食にとどまらず、カメラにも興味を持ったことから、写真大学を卒業後はカメラ業界紙での営業を経てフリーのカメラマンになりました。また仕事を通して目覚めたスキーでは一級の腕を持つなどスポーツやアウトドアの世界でも才能を発揮してきました。その仕事仲間と編集会社を設立し、アウトドアや旅行・味めぐりなどの本を手掛け、日本中を走り回ったそうです。そしてそのうちの1つ、釣りへの興味が後々淡路島への移住につながったのではないでしょうか。
約20年前、都市づくりのプロジェクトのために神戸に呼ばれた博允さんは、地域の調査・記録・資料作成の業務と地域活性化の業務を担当していました。6年前、地域の問題である減反政策に取り組む中で、転作としてたどり着いたのが雑穀です。当時は雑穀の魅力を知る人も興味を持つ人も少なかったため、平成20年、日本雑穀協会認定の雑穀エキスパートの資格を取得し、自らが栽培・料理研究に取り組み、淡路島出身の料理家・為後氏と共に料理教室も開催しました。
しかしその後、不況のあおりを受けプロジェクトは中止、博允さんもリストラにあいます。でもこれは「ピンチ!」でありながらも「チャンス!」だったのかも知れません。
年齢的に再就職が厳しいこと、世の中は健康ブームであることから「体に良くておいしい雑穀料理を提供できる店を出したらどうか」と考えたのです。
そして、平成21年春、ご夫妻で淡路島にオープンしたのが「雑穀レストランmillet(ミレット) marche(マルシェ) ソラ」です。雑穀料理レストランは現在でも大変珍しく、関西でも唯一あるのが「ソラ」だと熱く語る博允さんの目はキラキラと輝いています。これまでの多岐にわたる経験や研究と努力を経て、今、かつて神戸から釣りに通った淡路島で、島内外の人々に喜んでもらえるお店を持てたことは、大きな喜びではないでしょうか。
今年3月には、同じ南あわじ市の榎列小榎列に新店舗を移転し益々多くのお客さんに食の喜びと健康を提案しています。ゆったりとした気分で多種のメニューとお酒だっていただけます。そして、欠かすことの出来ないスイーツは惠子さんとお嬢様の担当です。各種の手作りケーキ、注文が入ってから惠子さんが作る黒米おはぎなど、どれも愛情とヘルシー感たっぷりで大人気です。
看板に「よそのおかんの台所」というタイトルがプラスされ更に充実した「ソラ」で、楽しくて美味しい健康食体験してみませんか。
取材日:2013年05月15日