季節が秋から冬に変わりつつあり、淡路島の山々にも赤や黄色の美しい紅葉がみられます。豊かな自然の色を眺めながら到着したのは、洲本市の市街地から少し丘を上がったところ、島内唯一の私立中・高等学校「柳学園」です。出迎えてくれたのは学園職員の陳洋平さん(34才)と奥さんの朱里さん(33才)です。
洋平さんは柳学園の教諭として、また同校サッカー部の顧問としても日々勤務されています。広々とした学園施設内の事務所をお借りして、現在の職に就いた成り行きや淡路暮らしについて聞いてみました。
神戸生まれの洋平さんは在日中国人3世として育ち中華同文学校に通ったということで、中国語やその文化への理解が深いようです。学園では社会科の授業を担当していますが、そもそも淡路島で先生をすることになったのはどんなことからなのでしょう。
きっかけは小学生のころに始めたサッカーです。大学を卒業するまで長きにわたり選手としてプレー、そして卒業後には指導者として8年間Jリーグ ヴィッセル神戸のサッカースクールで子どもたちにサッカーを教えてきました。
その熱心な指導に目を引かれた淡路サッカー協会の会長で柳学園の理事(香山 匡史 氏)から就職を進められたのは、洋平さんが26才の頃。30才を迎えるのを機に移住し新しい職に就くということを考え始めました。
同じく神戸出身で在日韓国人3世である朱里さんと結婚したのは2006年 。独身の頃からピアノの先生をしてきた朱里さんは陳さんの転勤には初めは乗り気ではなかった様子。
仕事のことや生まれたばかりの息子さんのこともあり、洋平さんの単身赴任や神戸からの通勤も考えたといいます。
それでも最終的に「やっぱり行くわ!」と決断したのだといいますが、知り合いもいない朱里さんにとって淡路島への移住は一大決心だったに違いありません。
情報が入りにくく、わからないことが多くて初めは大変だったと振り返りながらも、今は小学1年生になる息子さんを通じてできた友達や地域の人ともつながりを広げています。
そして何よりも毎朝果たすべき大きな使命を持っています。それは洋平さんのサッカー部に所属する寮生たちの弁当作りです。サッカーがしたい、と島外から来た生徒たちと洋平さん、計8人分のお弁当を作り、お昼には学園に届けます。かわいい奥様の愛妻弁当ならぬ根性弁当とでもいえそうですね。
朱里さんの応援を受けながらコーチとして頑張る洋平さんのもとには多くのサッカー少年が集まってきています。市内にある柳幼稚園の年中・年長児の教室、息子さんも通う市内の小学低学年児の教室、高学年から中学生のための教室・・・淡路島のサッカー人口がどんどん増えて、子どもたちの成長や活躍が楽しみですね。
淡路島の自然や食はもちろん、不動屋さんを通して見つけた借家での暮らしも気に入っているというご夫妻ですが、いずれはマイホームを持ちたいと口をそろえます。そこにはピアノを置き朱里さんのピアノ教室、庭にはサッカーボールが転がっていたりするのでしょうね。淡路島の素敵な家庭の絵が浮かびます。
取材日:2014年11月15日