淡路島の美しい棚田にも緑の苗が植えられ、恵みの雨が降る季節です。今回は梅雨の合間に、淡路市育波漁港近くに移住された国際カップルを訪問しました。
釣り船の並ぶすぐ前まで迎えに出てくれたのは、藤本美紀さん(39才)と3才になる娘さん。おふたりからご主人のカトリ・サントスさん(41才)と7才になる息子さんのお話を聞きました。
ご家族が暮らすこのお家はもともと美紀さんのおばあさんのお宅でした。阪神淡路大震災で全壊後に立て直したものです。お父様のご実家でもあった家ですが、おばあさんが亡くなってからは住人を失っていました。そこに移り住んだのが美紀さんたちでしたが、それまでの経緯をさかのぼってみましょう。
神戸市出身の美紀さんは短大を卒業後、2年間中国の大学に留学。まだ中国語が堪能でなかった彼女に中国語特有のあいさつで話しかけたのがサントスさんでした。「ご飯食べた?」・・・日本語の「元気?」に近いものですが、「まだ」と素直に答える美紀さんのために毎回腕を振るってくれた優しいサントスさん。
ネパールからの国費留学で北京大学に学び、美紀さんが日本へ帰国してからは途中マレーシアでの就職を経験、中国に戻ってからはアメリカ企業でエンジニアとして働きながらMBAを習得します。
遠距離のお付き合いが数年続き、2006年に結婚を決め中国での生活が始まりました。やがて息子さんが生まれ、上海での子育てが始まりますが、環境面やヒンズー教徒であるサントスさんの食べ物の面、そして子どもたちをのびのびと育てたいという思いから日本への移住を考え始めます。
実際日本に住み始めたのは2014年のことですが、子ども達にネパールのことも知っておいてほしいと考え、サントスさんを単身残したままサントスさんの実家で半年過ごしたという美紀さん。かわいい笑顔と穏やかさの反面その考え方と行動力には頭が下がります。
さて、日本に到着、まずは美紀さんのご実家に落ち着いたご一家ですが、サントスさんの就職が決まるころには、子どもたちも大きくなってきて家が狭くなってきました。
「淡路島で暮らしては?」美紀さんのお父さんの提案が、移住のきっかけでした。昔遊びに通ったおばぁちゃんの家。すぐ前には海が広がり、環境もよく、学校の規模も小さく子育てにはぴったり。一番喜んだのはネパールの大自然の中、美しい夕日や星空を見て育ったサントスさんだったようです。もちろん親子での海水浴も大好きです。
淡路島での暮らしも2年目を迎え、地域の人たちとの交流も深まっています。おじいちゃんの母校に通う息子さんは、おじいちゃんといっしょに校歌を歌い、ご先祖のお墓参りもいっしょです。二つの国にルーツを持つ子どもたちの成長、ご夫妻の今後の活躍を多くの人が見守ってくれているようですね。
取材日:2016年06月15日