温暖な土地として知られる淡路島も師走を迎え人の往来も増えつつあります。暖かな1日の昼下がり、島の中心地、洲本市にある「城下町洲本レトロこみち」を訪れました。
レトロこみちのメイン通りから路地に入ったところにある「たねさん’s kitchen」で迎えてくれたのは種市陽介さん(35才)。今回は、たねさんこと種市さんにあわじ暮らしについてお伺いしましょう。
札幌生まれのたねさんが大阪の調理師専門学校を経て就職したのは神戸市。神戸港のクルーズ船コンチェルト内で中華料理のシェフとして8年間働いてきました。その間に食の安全性について考えたことから、食べ物を作る側の近くにいたいという思いが湧いてきました。
そこで思い浮かべたのが以前にツーリングで何度も訪れたことのある淡路島でした。「今のまま仕事を続けるのか、自分で何かやるのか・・・。」思いを巡らせている時に知ったのはパソナグループの半芸半農というスタイルの働き方でした。
たねさんにとって農業はもってこいのチャンスでしたが、芸術に関しては、特に経験があったわけではありません。それでも前向きなたねさん、いろんなことを勉強してみようと2011年には淡路島への移住を決めました。
パソナでの3年間では、農業を体験する中で食材に関しての知識を広めます。また、芸能の面ではプロを目指す仲間たちと共に指導を受け、ミュージカルの舞台も経験。小さい頃から歌うことが好きだったというだけあり、舞台で歌うことも楽しめたと振り返ります。舞台に立っても物おじしない堂々としたたねさんの姿が思い浮かびますが、今はご自分の店のオーナーシェフとして人懐こい笑顔でお客様を迎える姿も魅力的です。
「城下町洲本再生委員会」が運営するレトロこみちでの出店はパソナでの3年間の契約が終わったのちの2014年の春のことですが、実は以前から出店者を募集していることを知っていました。その時にすぐに飛びつくことなく3年のうちに淡路島での暮らしにも慣れ、人脈を広げてきたことも現在の営業にプラスになっていることでしょう。
たねさんお得意の中華料理や中国茶を気軽に楽しめるお店とあって、テレビや雑誌の取材も増えています。当初は主に島外からのお客さんを期待していましたが、オープンから続けて地域のリピーターが少なくないようで、応援してくれる地域の人を大切にしたいといいます。
「淡路島は暮らしやすいけど、給料は都会の3分の1。でも下積みだと思えば苦にならない。」と言い切るたねさん。これまでの経験や今の下積みを重ね上げ、さらに発展していくことを楽しみにしています。
取材日:2016年12月27日