還暦を機に新たな人生を生き直す
有住一郎さん(63才)・裕子さん(62才)のあわじ暮らしスタートは今から三年前のこと。一郎さんが60才を迎える頃でした。
東京生まれの一郎さんは、これまで食品流通・サービス業の現場を全国各地で経験し、リゾート開発やホテル経営を経て独立。淡路島への移住前までは対岸の神戸市内でワインとフランス田舎料理の店を運営してきました。
還暦を機に、身体が元気なうちによりアクティブな次なるライフステージに歩み出すため「新しい生活を新しい土地で」と考えての移住でした。
さぁ、どこへ旅立とう?
世界で一番暮らしてみたい場所を、と地球儀を回し直感的に選んだのが淡路島だったという一郎さん。実は一郎さんのお名前も還暦を機にご先祖から受け継いだ「佐兵衛」という名前に改名したのだとか。同時期に「裕乃」に改名した奥様と一緒に豊かな自然、食材に恵まれ、100%を超える自給率を誇る淡路島への移住を計画し始めました。
長年暮らした大阪のお宅から2ヶ月通い30軒もの空き家を巡り、やっと巡り合ったのが南あわじ市の西淡地区にある現在のお宅です。物件の広さ、自家菜園のある暮らし、都市からのアクセスの良さ、どれをとっても理想的だったようで、海まで散歩でき、夕日の美しい慶野松原の地に見つけた元民宿を「ありずみや風庵(しなどあん)」として誕生させようと決めたのも60才の誕生日のことでした。
人が集い、人がつながる風庵
移住から3年。神戸の炊き出しに音楽で関わってきた一郎さんは、島内の仲間とも音楽グループを作っています。地元の慶野松原を守り伝える活動、馬との暮らし、ヨット、地域の百歳体操にも参加。淡路島の伝統芸能である浄瑠璃に入門するなど、趣味やネットワークをどんどん拡げています。
また、「この島に来てその魅力を見出している人が多い。若い世代の人たちの相談役や応援団として一緒に走り続けたい。」と熱く頼もしい言葉を話してくれます。
一方、「淡路島への橋を渡ると空気が違う。」と優しい笑顔語ってくれるのは裕子さん。染色から織物など多彩な布職人を目指していますが、ごちそうしてくれた手作りのデザートも棚に並ぶ保存食の数々や島の蔓を編んだ家具も淡路らしく趣があって「風庵」の雰囲気を引き立てています。
「風庵」は宿泊代を取って営業をする民宿ではありません。各地からのお二人の友人や淡路島での活動で知り合った人など、いつでも人が集まり、人と人がつながる場所として開放されています。「心楽しく生きること、自然やアート、農と共にあるまるごとの暮らしを分かち合いたい。」という、そんなお二人の思いに心がほっこりしました。
取材日:2017年11月15日