移住者の声
佐藤明希

ご機嫌に、心地よく生きる

職業:森のようちえん まんまる 代表・保育士 移住年:2015年 前住所:香川県 現住所:洲本市

五感を使い、自主性を尊重する
森の中のようちえん「まんまる」

蝉の声や鳥のさえずり、枝葉が風に揺られ、こすり合う音…
うだるような暑さの日も、森の中は別世界のように涼しい。

そんな、四季の移ろいをダイレクトに感じられる森の中に「森のようちえん まんまる」はありました。

「まんまるでは、大人の私たちはルールを決めず、子どもたちの自主性を尊重しているんです」

そう話すのは、代表の‟あじめさん”こと、佐藤明希さんです。(以下、あじめさん)

あじめさんは週3日、9時から15時までの時間を、10人前後の子どもたちと森の中で過ごしています。

「朝の会で絵本を読んだら、お話したいこと、困っていることなどを聞いて、今日一日やりたいことを全員に発言してもらいます。もちろんやりたいことが‟まだ決まっていない”でもOK。まんまるでは、‟いま、ここの気持ち”を大事にしているので、子どもたちの‟やりたい”も‟やりたくない”も尊重して、自分の思いを大事にすることの大切さを教えています」

鬼ごっこやおままごとをする子どもたちのかたわらで、木登りをする子もいれば、遊び疲れて、ハンモックで眠る子どもたちの姿も。

「ここ(森の中)は全部そろっているから、いるだけで楽しい。私たちが特別なことを教えなくても、自然が全部、教えてくれるんです。森の中でようちえんをやる一番の理由は、そこにあります」

‟一日として同じ自然はないから、一日として同じあなたがいなくてもいい”

だから、「生きてるだけで良いんじゃない?」
いまのためのいまを生きていれば大丈夫、そう子どもたちに伝えていきたいのだそうです。

 

長野から香川、香川から淡路島へ…
たくさんのご縁と偶然が導いた、淡路島移住

「昔は研究者になりたかったんです。大学は農学部で、土壌学を学んでいました。大学院を出たとき、ちょうどインタープリター(自然解説員)という言葉が浸透し出したころで。私は人と自然と、話すことが大好きだから、最初は岐阜、その後は長野の自然学校で環境教育プログラムを提供するようになりました」

しかし仕事は多忙を極め、日々伝えている‟自然とともにある暮らし”とは、ほど遠い生活に。

「深夜帰宅はざらにあり、食事は24時間スーパーで買うような生活でした」

そして、伝えていることと、自身の生活のズレに違和感を覚え始めたころ、転機は訪れます。

「徳島にある自然スクールで出会ったTOEC代表の伊勢達郎さんに、プログラムを決めない‟場を信じるキャンプ”を教えてもらったんです。その面白さが、衝撃的で。早速、自分の職場に戻って小学生キャンプに取り入れました」

「そしたら、突然与えられた自由な時間に‟何をしたらいいですか?”と、戸惑う子たちもいることが分かって。きっと小さなころから、自分の意志よりも大人たちや周りの声に従って動くことに慣れていたんでしょうね。だから、大人たちが決めるのではなく、幼児の頃からもっと自由に、‟あなたがやりたいと思うことをしたらいいよ”と言ってあげられたらどうだろう?と。そういう環境づくりに興味を持ったんです。そしたらちょうど、香川県で森のようちえんの立ち上げの保育者として声がかかり、香川県に移住しました」

しかし早々に園の方針が肌に合わず、次第にあじめさんは、その当時、淡路島に滞在していた友人に会いに行くことが息抜きになっていきました。

(写真:しまフォト)

「しょっちゅう淡路島に遊びに来てました(笑)そしたら夏至祭りで、以前、アフリカンダンスと太鼓を習うために行ったギニアで出会った夫婦と、偶然再会したんです。そしたら‟しばらく淡路島でアフリカの太鼓を教えるから、ダンスを教えに来て欲しい”と言われて、毎週のように淡路島へ通うようになりました。そこからですね、だんだん知り合いができていくようになったのは」

香川から淡路島へ通い詰めること約半年。気付くと知り合いは、30~40人にも増えていきました。

「森のようちえんも淡路島でやりたいと思って、それを周りに伝えるようになったら、ここのオーナーと知り合うことができたんです」

住む家もスムーズに決まり、2015年3月に淡路島へと移住すると、その翌月には「森のようちえん まんまる」を開園。今年で5周年目を迎えます。

「最初はこの仕事で生きていけるか不安もあったけど、この5年間は、‟ほら、大丈夫だったでしょ?”と、一個ずつ自分の不安を解消していく時間でもありました」

あじめさんがやっと見つけた、自分らしく生きられる場所。それが、淡路島でした。

 

どこで暮らすかではなく、誰と生きるか
‟子どものため”ではなく、自分自身の‟ワクワク”を大切に

あじめさんは淡路島へ来てから、森のようちえんとアフリカンダンス、そしてもう一つ、叶えたことがあります。それは、‟手作りの衣食住”。

「まだ、ぼちぼちですけどね(笑)私っていま、週3日しか働いていないんです。このライフスタイルを実現できたのも、淡路島に来たおかげです。いままでは、お金はあるけど時間がない生活でした。それが、いまはその逆で、週4日も時間がある。時間があるからこそ、何でも自分でできる。自分でできるから、時間はかかってもお金はかからないんです。簡単で便利なものは、楽だけどつまらない。私にとって、めんどくさいことは楽しいんです!いまは、仲間に教えてもらいながら米作りや保存食作りに挑戦したり、暮らしをカスタマイズしてみたり。今日着てきた服も、上下とも手作りなんですよ!」

‟淡路島はちょうどいい規模でやりたいことができるし、手の届くところになんでもある。サイズ的にちょうどよかった”あじめさんは、そう語ります。

「今後がどうなっていくか、明確な答えは分からないけれど、ご機嫌で心地よく生きていけたらそれで十分。‟こうでなければいいけない”なんてことはないんだということを、日々学んでいる最中です。移住も一緒。そんなに大ごとと思わないで、引っ越しくらいの軽い気持ちで来たらいいんですよ(笑)大事なのは、‟どこで暮らすかより、誰と生きるか”」

「そういう意味では、移住を考えているファミリー層には、‟子どものため”を理由には来てほしくないですね。だって子どもたちには、お父さん、お母さんが毎日ニコニコして笑って過ごしてくれていることの方が大事だと思うから。家族でも、単身でも、周りの流れに乗るんじゃなくて、自分がどうしたいか、何にワクワクするかに従ってほしいです。不安な気持ちも、何が不安なのか具体的に掘り下げて、実際に淡路島で時間を過ごして、他の移住者さんに体験談を聞いてみたりして解決したらいいと思います」

パワフルなあじめさんの考え方に賛同し、これまで、「子どもをまんまるに通わせたい!」と移住してきた家族が3組もいるのだとか。これから子育てを考えるファミリー層は、あじめさんに一度、相談してみてはいかがでしょう?家族みんなが笑顔で生きるためのヒントが、見つかるかもしれませんよ?

 

森のようちえん まんまる

兵庫県淡路市木曽下1277

Webサイト:http://awaji-manmaru.com

取材日:2019年08月14日

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