子育てを終え、趣味に生きる
「息子が大学を卒業したら、好きなことをしようと決めていました」
そう話すのは、今年 1 月に大阪から移住をしてきたばかりの尾形純子さん。息子さんが自立するまでの数年間、第二の人生について考えてきたそうです。
「自転車が趣味なので、家を出たらすぐに“サイクリングロード”がある場所に住みたいと思っていました。大阪は人と信号が多いから、いつも自転車が走れる河原に出るまで 1 時間以上かかっていて…。それをストレスに感じていたので、次に引っ越しをするならサイクリングで以前から訪れていた四国か淡路島に移住を考えていました」
「アワイチ」を目的に来るサイクリストが多いことや、実母が大阪に住んでいることなどを考慮し、行き来しやすい淡路島に決めたのは 2022 年春のこと。とはいえ、何からはじめたらいいのか分からず、ネットで情報収集しながらたどり着いたのが「あわじ暮らし総合相談窓口」でした。
「まだ職場に話はしていなかったので、半年後くらいを目途に移住を考えていたのですが、ちょうどそのころに短期滞在施設の“宙”が空くと聞いて、すぐに申し込みをしました」
その間も“淡路島へ行くことが楽しみで、ワクワクが止まらなかった”と話す尾形さんは、移住者交流会や一泊二日の特別面談に参加し、積極的に移住者の知り合いを増やし、自身でも物件情報をリサーチ。するといまの賃貸物件と出会い、なんと短期滞在施設に入る前に、物件が決まってしまったそうです。
「結局、短期滞在施設には 2 週間だけお世話になり、それからいまの家に引っ越してきました。独り身だし、最初は戸建てに住むつもりはなかったのですが、周りとも距離があり、平屋でここなら暮らしのイメージが湧いたのですぐに決めることができました」
大きな荷物は車で運び入れ、その他は吹雪の中“自転車で運んだ”というお話には驚愕しましたが、そんな頼もしい尾形さんは、お仕事も移住前と変わらず看護師という資格を活かし、南あわじ市の「介護・看護職員確保対策事業補助金」を利用しながら働かれています。
住んでみて分かった、サイクリストにとっての好環境
お酒を飲むことが好きな尾形さんは当初、飲み屋街としても人気な洲本市内で家探しをされていました。
しかし最終的に“自転車に乗ることを考えたら、農道と山の多い南あわじ市が理想だった”のだそう。
「大阪からサイクリングに来ていたときは、いつも帰りの時間を気にして走っていましたが、住んでしまえば時間を気にせずに自分のペースで好きなコースを走ることができるので、幸せだなと感じます。ただ、一人だと長距離を走る機会が減ってしまったので、いまは四国のグループライドにも参加して、仲間と一緒にサイクリングを楽しんでいます。そういう意味では、南あわじ市は四国に近いので、サイクリングの範囲が広がって良かったです」
近年、鳴門大橋にも自転車道(サイクリングロード)が整備されるとの噂もあり、尾形さんは仲間たちと四国と淡路島のサイクリングルートを作り、新たな観光資源の実現へと夢を膨らませています。
仕事から生活中心へ…半年の島暮らしで感じること
「これまでずっと、仕事中心で生きてきたので、移住後は生活中心で暮らしたいと思っていました。なので、こちらに来てからは正社員ではなく、週 3~4 日のパート勤務をしています」
移住後は大阪の友人が遊びに来ることも多く、尾形さん自身もさまざまなイベントに参加し、淡路島ならではの暮らしを満喫しているそう。漁師体験にも参加し、淡路島へ移住してからというもの「“人生でこんなことも知らなかったんだ”と思うような、新しい体験ができています」と、その充実ぶりを伺えました。
移住してまだ半年とは思えないほどに、島の暮らしを楽しんでいるアクティブな尾形さんですが“あわじ暮らし総合相談窓口を通して引っ越してきたことが大きかった”と、振り返ります。
「普通だったら、職場と家の往復になってしまいがちだけど、友達がたくさんできてとても楽しく暮らせています」
また、今後のプランについて伺うと「とりあえず季節を一巡りしてもう 1 年くらいしてから考えようかなと思う」と語ってくれました。尾形さん自身、大阪からお隣の兵庫県への移動ということもあり、移住というよりも引っ越しの感覚が強いようです。
「仕事柄、ここでしかできない仕事でもないので、楽しかったらずっといるだろうし、これから他にも暮らしてみたい土地があれば行くかもしれないし…。いまは淡路島の春と夏しか経験していないので、これからの季節にも触れて楽しみたいと思っています」
“わたし世代にはとてもいい場所!”淡路島をそう語り、第二の人生をとことん楽しむ姿を垣間見ることができた尾形さんの取材でした。
取材日:2023年08月07日