風薫る春。淡路島に一年で一番さわやかな季節がやってきました。
新緑の美しい山道を上り詰め、訪れたのは洲本市中川原の宮地さんご夫妻のお住まいです。まさに山の中の一軒家、思いっきり田舎暮らしが楽しめそうなお宅です。
温かく迎えてくれたのは宮地真(しん)さん(39才)・明子さん(39才)の新婚カップルですが、先に淡路島で暮らし始めたのもこの家を見つけたのも、明子さんです。そこでまずは明子さんの淡路暮らしのきっかけを聞いてみましょう。
明子さんが淡路島に来たのは今から約3年前、2011年の7月のこと。それまでに、グラフィックデザイナーとしての勤務経験、ニューヨークでのデザインの勉強、また大学での日本画の勉強など豊富な知識と技術を積んできました。グラフィックデザインから徐々に立体的な物作りに興味を広げてきたといい、アメリカから帰国するころからは特に日本のよさを感じるようになったとも・・・。
そんな明子さんを淡路島へと動かしたのは、南あわじ市に住んでいたおじいさんの存在でした。出身地である大阪では触れることのできない大自然や季節の風景を見せてくれたおじいさんの死去、そして仕事の関係で淡路島に移住。一度は、大阪へ帰郷しようと思ったところに、淡路市立陶芸館のインストラクターの仕事に出会い、陶芸を学ぶ機会に恵まれます。
陶芸館で働き始めた彼女の同僚だったのが現在のご主人、真さんです。7年も前からこの陶芸館で訪れる人に陶芸を教えてきたという真さんですが、当時はなんと兵庫県稲美町の実家からから毎日橋を渡って通勤していたとか。明子さんとの出会いがなかったら今でも毎朝夕に明石大橋を眺めていたのかもしれません。
お父さんが美術の先生だったという真さん。進学した美大では油絵を専攻しますが、陶芸に興味を持ち、陶工訓練校を経て窯元で4年間の修業を経験しました。その後には実家に窯を置き陶芸のかたわら美術予備校での講師も務めてきました。忙しい日々の後、陶芸に打ち込める仕事を手にしたのが、この淡路島、現在お勤めの陶芸館でした。
かくして淡路島に引き寄せられたお2人の住まいは、築30~40年の住宅で、明子さんが偶然知り合った方の知人である大家さんの持ち物です。独身で一人きりだった当初から「とっても親切にしてもらっている。」と満足気です。
通勤していた頃から「淡路島はおもしろそう。」と思っていたという真さんも、江戸時代の淡路の文献を紐解き、当時の事を想像しながら棚田の畦を歩き、風景や自然を楽しんでいるようです。玄関前には陶芸の窯、庭先には手作りの蜜蜂の巣箱。自然に囲まれたこの静かな環境の中、おふたりで大好きな陶芸に打ち込むことができる・・・理想の田舎暮らしのようですね。
「いずれは訪れた人が陶芸を体験したり、お茶を飲んだりできる場所を作りたい。」夫妻の夢は広がります。50音の最初の「あ」から最後の「ん」で、「すべて」を意味し、「あ⇔ん」は明子さんの「あ」そして真さんの「ん」からつけた名前。たくさんの経験や技術を身に着けてきた爽やかカップルにぴったりです。
「あ⇔ん」の陶器は淡路島内で年間を通して開催される「はらっぱマーケット」や「洲本レトロなまち歩き」などのクラフト市などで販売中。温かい作品に出会えます。
陶器 あ⇔ん
Webサイト:http://www.toukian.com/
取材日:2014年05月16日