爽やかな秋風がコスモスを揺らす頃、淡路島の西海岸へと向かいました。今回は洲本市五色町の海岸「五色浜」で末澤さんご夫妻にお話を伺いました。
神戸市出身の輝之さん(36才)が淡路島に移り住んだのは2013年のこと。それまでは飲食業に就き、全国各地への転勤や出張をこなしながら現場での作業や管理部門での仕事をこなしてきました。
そんな中で、自分たちが扱っている食材が気になるようになったといいます。とりわけ天然の海の成分を含む塩など納得のいく食材を求めたいと考えるようになりました。
そして自らの手で天然の塩を作りたいと考え、その現場として思い浮かべたのが淡路島でした。神戸から近いということや、幼いころからよく釣りに訪れていたこともあり、海に囲まれ、恵まれた自然環境は製塩にはもってこいだと考えたのでしょう。
そうして2013年の初めには淡路島の各地を見て回り、海のすぐそばで製塩にちょうどよさそうな場所を見つけます。たまたま声をかけてみた散歩中のお年寄りがその土地の持ち主だったことから、話は急転換。輝之さんの話を聞いた老夫妻が、その周りの土地を貸してくれることになったのです。
長い間使っていない土地とはいえ、見ず知らずの若者に提供してくれるというのも、高齢化の進む地域であるからとも考えられますが、それよりもまず若い輝之さんの目の輝きにその本気度や、やる気を見出したからに違いありません。
元漁師であるその持ち主さんのおかげで、漁業や地区の人々への理解や応援も受けることができ、いよいよ塩作りの準備が始まりました。まずは荒れ放題だったその土地の草刈りや開墾ですが、大規模な機械を使わずに自らの力で作業をこなしたといいます。また、作業場の建設も大工さんと共に輝之さん自身が奮闘したと聞いて驚きます。
そうして、塩を製造するための鉄釜がひとつずつ運び込まれ、すぐ前の海からポンプで運ばれた海水を運ぶ準備ができ、いよいよ40時間かけて薪で炊き上げる作業が始りました。夏の暑さ、冬の寒さだけでなく孤独でもあり大変な作業ですが、それでも納得の行く商品を作るという思いは今も2013年の秋の販売当初と変わりません。
ただし、大きく変化したことが1つ。明るくてかわいい奥様の歩さん(30才)が傍らにいてくれることです。同じ兵庫県の加古川の出身で馴染みがあったのでしょうか、淡路島での暮らしについて「とても暮らしやすい。シンプルで解放感のある暮らしができる。」と素敵な笑顔を見せてくれます。
その横で「受け入れてくれた地元の人に感謝の気持ちでいっぱい。」とやさしく語る輝之さん。このお似合いカップルが作るオンリーワンの塩、試してみたくなりませんか。ご夫妻と同じように淡路島の自然を感じることができますよ。
取材日:2016年10月15日