淡路島に移住して10年
地元に根付き、オリジナル“観光スポット”を開園
南あわじ市の八木にある、可愛い看板が目印の「ヤギ牧場」。
そこに、淡路島へ移住して10年目になる移住者さんがいました。
「チーズにバター、ミルクにレー!可愛いだろ?」(※レ[lait]・フランス語でミルク)
そう言って、名付けた子ヤギにレタスを与えているのが、ヤギ牧場を管理する堂本秀幸さんです。
「最初は循環型農業をやりたくて、ヤギを飼い始めたの。元々“なんか動物飼いたいなぁ”とは思ってたんだけど、ここが八木(やぎ)地区だからヤギが良いんじゃねーかってひらめいて(笑)ただそんだけの理由なんだけどな!」
ここでは子ヤギ以外に、親ヤギを含めた約20頭のヤギを管理しています。
ヤギの横では、ニワトリを飼育。
「これはアメリカの珍しい品種なんだ。カッコいいだろ?この子たちが産んでくれた卵はね、俺がありがたくいただくんだよ(笑)」
また、その横で飼育されているうさぎには…
「子供たちが喜ぶでしょ?だから飼ってんの!」
当初は畑の雑草を食べてもらうために飼い始めたヤギでしたが、その珍しさに見物客が増え、気付けば動物園さながらに増えていったのだそうです。
いまでは噂を聞きつけた淡路島の友人や親子、そして移住を考える島外からの来客が絶えず訪れ、ちょっとした話題の観光スポットとして親しまれています。
元料理人
玉ねぎの美味しさに惹かれ、淡路島へ移住
堂本さんの職業は、ヤギ牧場の園長…ではなく、実は珍しい玉ねぎの栽培方法で注目を浴びる、農家さん。そのルーツは、全国のホテルで腕を振るってきた“料理人時代”にありました。
「長年、料理を作ってるとさ、料理よりも食材に興味を持つようになるんだよね。それでいろんな食材を探してるうちに、淡路島の玉ねぎに出会ったわけ。もうその美味しさに感動しちゃって、淡路島に移住を決めたの!」
そうして2009年、奥さんの実家である淡路島へと移り住みます。
念願叶い、農家デビューを果たした堂本さん。農家としてまず目を付けたのは、甘くてみずみずしい新玉ねぎでした。しかし、新玉ねぎは春の食材。「この美味しい淡路島の新玉ねぎを、一年中、味わってもらいたい…」。そんな思いで生み出したのが、冬に収穫する玉ねぎでした。
「春先に種をまいて早めに収穫した小さい玉ねぎを、夏の間、冷蔵保存しておくの。それを秋にまた定植させると、冬に立派な新玉ねぎができるんだよ。春に採れるものと同じくらい、甘くて美味しいよ!」
独自の方法でたどり着いた、大振りで甘い新玉ねぎは、自らが顧問としても務める淡路島観光ホテルで取り扱われています。
淡路島の魅力は、‟たくさんの出会い”
知り合いが増えていくことが、ここでの楽しみ
堂本さんに、移住当初の淡路島の印象を伺うと
「淡路島に来るまでは、小さくて窮屈な島なんだろうなと思ってたの。でも、来てみたら意外と広いんだなって感じたね」
沖縄や徳島、ときには海外でも仕事をこなしてきた堂本さんは、移住当初の不安や特別なギャップはそれほどなかったと話します。
「淡路島に来て不便さを感じたことがないから、“苦労らしい苦労”ってそんなに語れないんだよ。そもそも不便て、なんだろうね?(笑)贅沢しなければ不便はないよ。俺は昔からそういう考えなんだ」
淡路島で循環型農業を始めると、堂本さんの周りにはたくさんの人が集まって来たそうです。
「俺、ここ作って正解だと思った。動物たちが人を寄せてくれるから、繋がりが広がった。この牧場もそうだけど、みんなが見に来てくれるから動物が増えていったし、みんながゆっくり過ごしていけるからこの小屋もできた。“ここでピザ焼きたい”って言う人もいたから、窯まで作ったんだよ(笑)」
それも全て、知り合いに「余ってるから使ってよ」とゆずり受けた板や鉄筋ばかりで、ほとんどお金もかからなかったのだとか。
「とにかく人に恵まれた。よそ者だからっていう目線や窮屈さは一切なかったよ。島の人たちには、そういう優しさがあるよね。だから俺は移住相談を受けたら必ず、“淡路島は最高だよ!このちょうどいい島のコンパクトさが、自分の居場所になっていくから面白いよ!”って言ってんの」
自由に楽しみながら暮らす堂本さんの姿に影響を受け、昨年、実際にこの八木地区に移住してきたご夫婦もいるのだそうです。
“堂本移住相談所”としても地域の役割を果たしているヤギ牧場に人が集まるのは、堂本さんの魅力?それとも、淡路島の魅力…?
「ここは俺が作ったんじゃないよ、みんなが作ってくれたもの。だからこれは淡路島の魅力じゃない?淡路島でしかできないことだったんだから。ここでの出会いは全部、俺の財産なんだ」
そう力強く答える姿に、人が訪ねて来る理由を垣間見れた気がしました。
移住するなら、早くその土地を好きになること
‟自分が寄っていけば、人も集まってくる”
淡路島へ来て10年。堂本さんは、淡路島を“楽園”とたとえます。
「だって“幸”が多いんだもん。食材だけじゃなくて、人もそう。パワースポットも多いし、まだまだ知らないところがいっぱいある。だから淡路島は、楽しいよね」
そんな淡路島の楽しみ方を熟知した堂本さんに、移住希望者へのアドバイスを伺うと
「まずは早くその土地のことを知って、好きになることだよ!移住って、好きにならないとできないから、自分からどんどん寄っていくことだよ。そうすれば人は集まってくる。アドバイスを聞けば、どんどん可能性は広がっていくよ」
「だからぜひ来てください、淡路島の楽しさを教えてあげます!」
“俺は島の人間だからな!”そう笑い飛ばし、何でも楽しみながら生きる堂本さんの姿に、希望をもらっている人も少なくないはず。
今後も堂本流のポジティブな発想で、八木地区から淡路島を盛り上げてくれることでしょう。
南あわじ市を訪れる際は、「八木のヤギ牧場」へ足を運んでみてはいかがでしょうか?堂本さんに会えば、きっと移住の不安も吹き飛ぶかもしれませんよ。
取材日:2019年04月12日