移住者の声
郷田翼さん・郷田友恵さん

はじめから100点を目指さない起業

職業:蒸留家・スパイスガイド 移住年:2019 前住所:沖縄県恩納村 現住所:洲本市

 今年の春、洲本に突如オープンした、美・食・健康をテーマにした複合型アパレルショップ「marusho marche dor door(マルショウマルシェドアドア)」をみなさんご存知でしょうか?とってもスタイリッシュな店内に、淡路島のオシャレなお店がその名の通りマルシェのように小さな間口で並んでいる、いい意味で島っぽくないお店です(笑)そんなお店の一角にスパイス専門店をオープンさせたのは、元中学校教師の郷田友恵(ごうだともえ)さん。今回は夫の郷田翔(ごうだつばさ)さんにも同席してもらい、郷田夫婦の移住準備から今に至るまでのアレコレをお伺いしました。

 

複合型アパレルショップ「marusho marche dor door」

 

沖縄経由で淡路島に移住

 神戸で出会った二人。学生時代から交際し、その後、結婚。神戸時代、友恵さんは中学校の英語の先生として勤務、翔さんは飲食店の開業支援の仕事をしていました。中学校教師と飲食関係という職業柄、家にいる時間も休みの日も合わず、二人で過ごす時間が全くといっていいほどなかった郷田夫婦。この状況を打破したいなあと、いつしか淡路島への移住を考えるようになっていました。飲食関係で知り合った淡路島の玉ねぎ農家さんに相談するなど、少しずつ移住の準備を進めていました。そんな折、翔さんに沖縄の店舗の立ち上げを担当してほしいとの打診が。それは、店舗運営が軌道に乗れば終わり、約一年の期限付きのお仕事でした。

 

 淡路島に移住する前に、長い新婚旅行のつもりで沖縄に行ってみてもいいのでは!

 

と考えた郷田夫婦。友恵さんは夫の転勤に帯同という形で教師を退職し、心機一転無職となりました。そして沖縄で、教師の経験を生かして学童のスタッフをしたり、道の駅のバイトでマンゴーの梱包をしたりと色々な経験を積んでいきます。そんなこんなであっという間に一年が経過。そしてついに淡路島に移住しようと、再び知り合いの玉ねぎ農家さんに相談すると、ちょうど今、移住者支援住宅に空きがあるとのことで、島から島への移住というミラクルを果たしました。

 

勧められたらとりあえずやってみる、やりたいことは口に出してみる

 念願の淡路島。とりあえず働き口を探そうと思った友恵さん。もう教師はいいかなと考えていた。なので、沖縄で楽しく働けていた道の駅の仕事をしたいなと思い、福良マルシェという産直のお店に働き手の募集がないか尋ねてみると

 

 いま販売の仕事の募集はないんだけど、社内でうずしおクルーズのガイド事業(※)を立ち上げようと思っていて、立ち上げスタッフを募集しているから応募してみませんか?

(※うずしおクルーズを運営する会社が、福良マルシェの運営をしています。)

 

という提案を受けます。ガイドの仕事は全くの未経験、だけどせっかくだし挑戦してみよう!と思い働き始めた友恵さん。初期スタッフ5人ほどで、以前船内放送で流していたアナウンスをアレンジし、ガイド用の台本を作っていきます。その後、コロナ禍になり出勤できない日々も続いたが、幸い母体が大きな会社だったこともあってか、リモートでの出社が可能になり、なんとか辞めずに済んだそう。

 

 教師時代に比べ、淡路島の仕事はホワイトで9-17時できっちり仕事が終了。なので、夫婦一緒に過ごす時間はもちろん、趣味に使う時間が増えたという友恵さん。時間ができると趣味のチャイづくりに励んでいました。淡路島にはチャイの材料になるスパイスを売っているお店がなかったので、神戸に帰る機会があればその都度購入していました。そんな時ふと、淡路島でスパイス屋ができたらいいなと思った。そんな思いを出会う人たちに伝えていたら、森の木baseというフリースペースを運営している友人が「ここでチャイを淹れるイベントをしてみないか?」と声をかけてくれた。

 

 そこから定期的にチャイを淹れるようになり、それを見てくれていた建築士さんが「今度うちの事務所で設計する店舗がテナントを募集しているからお店をやってみないか?」と誘ってくれた。

 

念願のスパイスショップをオープンさせた友恵さん
スパイスガイドの友恵さんに相談しながらスパイスが購入できます。

 

 

 淡路島に来たら、周りに起業している人が多かったのでお店をやってみようと思えたんです。たぶん神戸にいたら、起業はしていなかったと思いますね。

 と友恵さんは振り返ります。今は週3ガイド、週3スパイスショップという配分で働いているそうです。

 

 

いろいろな仕事を掛け合わせた自分らしいワークスタイル

 一方、翔さんは知人に紹介された会社に就農しましたが、さまざまな理由が重なり半年ほど勤務したのちに退職。次の仕事に就くまでの充電期間中、友人に誘われて淡路島のバーで飲んでいました。そこで出会ったのが、淡路島を拠点に活躍する調香師(香りを調合して作る人)さん。話をしていたら意気投合して、「三日後くらいにハーブの蒸留をするから手伝ってほしいんだけど」とお誘いを受けます。蒸留のことはよく知らなかったけど、ハーブには興味があったこともあり、「なんか面白そうだから行ってみよう!」と気軽な気持ちで本当に指定された現場に行くと、

 

 「蒸留に誘って本当に来たのはあなたが初めてだ!」 

 と驚かれたそうです(笑)

 

 そんな出会いから蒸留にのめり込んでいった翔さん。ご自身の肩書きを「蒸留家」と名付け、蒸留をテーマに島内外で活躍中。前述した蒸留のお手伝いはもちろん、香りをテーマにしたお食事を楽しめる「mochitsu motaretsu」というレストランを淡路島の建築事務所のカフェスペースで金・土曜日限定で営業したり、島内のナチュラルワインのお店にも勤務したりと、複数の仕事を持っています。

 最近は蒸留つながりで九州の焼酎文化にも興味が湧きてきて、九州の焼酎蔵で焼酎の蒸留について学んできたそう。そんなこんなで、奥様のスパイスショップの営業終了後に同じ場所で焼酎バーもスタートさせました!!!

 

 入り口で100点を求めるのではなく、小さくても何かを始めてみるのが大事。

 と翼さんは教えてくれました。

 

金・土の夜だけオープンする焼酎バー(※ぱらりとのInstagramより)

 

 

 今後は、飲食関係のつながりを生かし淡路島のお店にスパイス卸したりしながら、少しずつスパイスの販路拡大もしていきたい!と意気込む翔さん。夫婦の好きと得意が重なり合い、活動の幅がますます広がっていっていく予感がプンプンの取材でした(FIN)

 

とっても美味しい友恵さんのチャイ(お店で飲めます)

 

 今回の取材では、小さく始めること、複数の仕事を掛け合わせることの大事さを教えてもらいました。移住相談の現場では、理想の物件が見つからないから移住・起業はやめました。という報告を受けることがたまにあり、残念だなと思うことがあります。理想にぴったりでなくても、小さく始めることで情報が集まってくる。はたまた、家計のために働き始めた職場の同僚に自分のやりたいことを伝えていたら、人や物件を紹介してもらったりと、思わぬところからチャンスを得るというのもあると思います。複数の仕事があることで一つが失敗してもダメージが分散しますしね!

 

 だから、一回島に来て、家を借りてみる・仕事を始めてみるなど、グッと島との距離を近づける行動をとると、道は開けるのでは?と思うのです。

 

 

ぱらりと

兵庫県洲本市物部3丁目6−13 Marusho Marche DoA Door 内

Webサイト:https://www.instagram.com/pa.ra.ri.to/

取材日:2024年09月19日

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