3年くらい前だっただかな?いつものようにInstagramで淡路島情報をチェックしていると、淡路島でブルワリー(クラフトビールを作る小規模醸造所)を作るため、条件に合う倉庫を探しているというアカウントを発見。その頃からインスタをこまめにチェックし陰ながら応援していた名もなきブルワリーさん。2023年6月に慶野松原の元瓦倉庫をリノベし、NAMI NO OTO BREWINGという屋号でオープン。今回は慶野松原の醸造所兼直売所でお店を開くまでの経緯をお伺いしました。
島暮らしのルーツは徳之島
河野さんの祖父は徳之島(鹿児島県にある離島)に住んでおり、幼少期、島に遊びに行く機会が何度かあった。祖父は島で畜産や作物、親戚は果樹などを育てていたそう。そんな姿を見ていたからなのか将来を考えたとき、農に関わりたいと思い農学部に進学した河野さん。学校ではさまざまなことを学んだが、農業そのものより加工の方が面白そうだと思い、新卒で⾷品加⼯会社に就職します。
その後、ずっと興味があったお酒造りをするため、⼤阪の⾼槻市にある壽酒造(國乃長ビール)に転職。そこでは、⽇本酒とクラフトビールの醸造に携わりました。仕事を通じビールの世界を知れば知るほど、自分のビールを作りたいという気持ちが大きくなってきた。そんなタイミングで独立の候補地探しをスタートさせたのです。
その時に思い出したのが徳之島での祖父の暮らし。
農業をしながら島暮らしって素敵だなと思った。でも、自分の故郷は大阪。なので徳之島ではなく、関西圏の海に近い場所で独立できたらと考え、候補地に上がったのが淡路島でした。
開業の地との出会い
「淡路島の海沿い」に目標を定め、北から南に向かってビール作りが出来そうな倉庫を「不動産屋さんの紹介」と「自分の足」半々くらいの割合で探しはじめます。そこから半年くらい探しましたが、なかなか条件に合う物件は見つかりません。そこで、地元の方が経営するお店に立ち寄り「ビールを作りたくて、ここら辺で倉庫を探している」という話をしたところ、たまたまそこのお店のオーナーさんがクラフトビール好きで、意気投合したそう。その流れで、地元の瓦屋さんを紹介してもらい、慶野松原エリアにある瓦倉庫を借りることが出来ました。
慶野松原は、地域の人が親切で、景観も素晴らしい。そのことが、ここで開業する決め手になったと思う。
慶野松原以外にも、洲本もいいなと思っていたという河野さん。物件を探す中で出会った洲本の方たちから、まだブルワリーもできていないころに、ソダテテマーケットへ出店のお誘いを受けます。そこでブルワリーのことを知ってもらい、淡路島でものづくりをしている人たちや、生産者さんを紹介してもらったそう。
淡路島はビール作りに協力してくれる生産者が多い
次から次へと新商品が発売されるNAMI NO OTO BREWINGのクラフトビールたち。なぜこんなに商品数が多いのか尋ねると、「基本はシーズナル(季節限定)メインで行きたいと思っているんです。」とのこと。その中でも定番として作っているのは森果樹園さんのなるとオレンジを使った「ペルジャンホワイト with なるとオレンジ 」というホワイトビール。こちらは爽やかな香りとほんのり苦味やスパイシーさが広がる味わいのビールです。
なるとオレンジは淡路島特有の品種の果物で、島外からの引き合いも多い。だからこれは定番でずっと作っていこうと思っています。
淡路島には「農産物×ビール」に興味を持ってくれる生産者が多く、コラボビールが作りやすい環境だなと日々感じているという河野さん。ソダテテつながりで知り合った「farm studio」さんで栽培されたとれたて新米「縁結び」を使った新商品「WAKABA 」もつい先日リリース。取材時には、10種類ほどのビールが販売されていました。雄大な自然、海、そして豊かな農業を抱える淡路島で「人と農」「人と人」「人と文化」を繋げる、そんなお酒づくりができたらと語る河野さん。これからどんなコラボビールがリリースされるのか、楽しみで仕方ありません。
3人息子のお父さんでもある河野さんに淡路島での子育てについてもお伺いすると、自宅のある南あわじ市は子育て支援が充実しているし、都会に比べて公園は少ないけれども、市内にあるイングランドの丘が入場無料なのが嬉しいとおっしゃっていました。大阪時代に比べて子供の自然体験の幅も広がっているし、習い事の選択肢も思っていたよりもあって、子育て環境について特に不満はないそうです。子供の通う小学校には同じように移住してきた方が多く、横のつながりもあるとのこと。仕事も私生活も充実している感じが伝わってきてとても嬉しい気持ちになる取材でした。これから夏に向けてビールが美味しい季節、淡路島の味がするビールを求めて、ぜひ島に遊びに来てほしいと思います。(FIN)
取材日:2024年02月09日